私は今、猛烈に家に帰りたい。
婚活サイトで出会った大手銀行に勤めるハイスペックリーマンとの初顔合わせ。会ってからまだ10分も経っていないのに、すでに“ダメンズ”の匂いがぷんぷんとしてくるのだ。
ああ、学歴や収入に一瞬でも目が眩んだ自分が死ぬほど憎い……!
令和に生きる婚活女子の理想は「スマート節約さん」
<登場人物>
- 石原真美(いしはらまみ)★主人公
都内の美容クリニックで看護師として働く28歳。彼氏いない歴3年。結婚願望は人並みにあるが、女性ばかりの職場で出会いがないことが悩み。最近、思い切って婚活を始めようか迷っている。
- 見栄ハリオ(みえはりお)
大手銀行で営業として働く35歳。一代で事業を成功させた上昇志向の強い父親の背中を見て育ったため、プライドが高く見栄っ張り。恋人ができても長続きしない傾向があり、見兼ねた母親がしびれを切らして婚活サイトに勝手に登録した。
- 須磨セツヤ(すませつや)
飲料メーカーでデザイナーとして働く37歳。大学生時代に借りた莫大な奨学金の返済を完済した経験から、節約スキルが身についている。彼女いない歴5年目に突入し、次に付き合う女性と結婚したいと思い婚活を始めた。
- 鈴木涼子(すずきりょうこ)
真美が登録した婚活サービスの担当コーディネーター。
綾部が澤部にすり替わった!? 真美が婚活を始めた理由
独身にとって、12月は魔の月である。街中を歩くカップルの数は普段とさほど変わらないはずなのに、クリスマスが近づくにつれて、自分だけがひとりぼっちのような感覚に陥ってしまう。
そんな寂しさに耐えきれず、昨年は出会い系アプリに手を出してしまった。マッチングした男性と、クリスマス当日に初対面でデートをするという暴挙に出たのだ。
お相手は、Web関係の会社に勤める29歳。身長172cmで顔写真はピースの綾部に似ていた。
メッセージのやりとりでお互いクリスマスは予定がないことを笑い話にしていたら、「おいしい日本酒でも飲んで憂さ晴らししませんか?」とさりげなく向こうから提案してくれたのだ。
“間に合わせ”の恋人探しで始めたアプリだったが、これだけ気軽に話せる彼なら、ひょっとするとひょっとするかもしれない。そんな淡い期待を抱いてデート当日を迎えた。
「もしかして、真美ちゃん?」
(え、このオッサン誰だよ……)
待ち合わせに現れたのは、綾部似のサラリーマンではなく、40歳は軽く超えているであろうハライチの澤部似のオッサンだった。
「あ、やっぱり真美ちゃんだ」
(えええええええええ、どういうこと? 綾部じゃなくて澤部じゃん! 部しか合ってNEEEEE)
その日は仕方なく、澤部と予約していたお店に行き、怒涛の勢いで和食のコースをたいらげ、ものの1時間半で解散した。
誤解のないように言っておくと、私は外見より性格を重視する。澤部だからNGだったのではなく、会えばすぐにバレるような嘘で塗り固められたプロフィールで女を引っ掛ける、その浅はかさにひどく呆れただけだ。
この日以来、私はもう2度と出会い系アプリには頼らないことを固く誓った。
そもそも、私がどうしてこんなに出会いに飢えているのかというと、職場が男子禁制の“大奥”だからである。都内にあるセレブ御用達の美容クリニック。女医の院長が女性専用で開いたクリニックのため、男性に接することが皆無なのだ。
職場に出会いがないのなら、合コンや相席酒場に行ってみればいいと言う人もいるかもしれない。しかし、私にとって合コンや相席酒場は、歴代のクソ彼氏と出会ってきた鬼門であり、アプリ同様に2度と利用したくない手段なのだ。
そんな頑なにならなくても……と思った人は、これからする話を聞いてジャッジしてほしい。
トリプルパンチ野郎と荒稼ぎ詐欺師。歴代クソ彼氏との出会い
初めて彼氏ができたのは、19歳の時。大学デビューを飾って合コンでゲットした3歳年上の彼は、佐藤健似のイケメンだった。初彼氏に舞い上がった私は、付き合い始めてすぐに彼の家に転がり込み、同棲を始める。
しかし、付き合って8ヶ月で浮気が発覚。さらに、ギャンブルでつくった借金があることもわかった。それでも、生まれて初めて出来た彼氏をどうしても嫌いになることができなかったのだ。
その後、ダラダラと関係を続けること3年。私が就職して4ヶ月経ったある日のこと、彼はバイトを辞めてニートになった。そう、あろうことかヒモ男と化したのである。
いつの間にか彼の生活サイクルは昼夜逆転になり、一日中家にいるのに、ろくに家事もせず、ゲーム三昧の日々を送っていた。そんな彼を見て、ようやく私は彼と別れる決心をすることができたのだ。
ちなみに、トリプルパンチ野郎というのは、「浮気」「借金」「ヒモ男」この3つのダメージを私に与えたことから命名した。
次に彼氏ができたのは、23歳の時。同僚に連れられて行った相席居酒屋で出会った8歳年上の会社経営者に猛アプローチをかけられ、付き合い始めた。経済的に余裕があって紳士的なところに惹かれたのだと思う。
いつの間にか結婚を意識するほど彼に夢中になっていたけれど、ある日インスタに届いた不審なDMから、彼が詐欺まがいの手法で荒稼ぎしていることを知ってしまう。
差出人は彼の被害者だと訴える人物。楽して稼げると勧められて教材を買ったものの、一向に収入が増える様子はなく、教材費用ばかりが嵩んでいくという告発文のような内容だった。
いつも羽振りがいいのでどんな事業をやっているのか気になっていたが、まさかそんな犯罪すれすれのグレーな商売をしていたとは……。
怖くなった私は、彼と自然消滅するように自分のLINE IDを変えて、音信不通を決め込んだ。我ながら、なかなか鮮やかな逃げ方だったと思う。
ヒモ男に荒稼ぎ詐欺師、自分は男運に恵まれない星のもとに産まれたのかもしれない。そう思わずにはいられなかった。
こうして、私はちょっとした恋愛恐怖症になってしまい、彼氏いない歴は3年目を更新した。だけど、もうすぐ30歳だし、結婚願望は人並みにある。特に今年はコロナの影響から自宅で過ごす時間が長くなり、寂しさを感じる瞬間も多かった。
「はー。いっそのこと、婚活でも始めてみようか」
これまでは自分で男性を見定めてきたから、ダメンズに引っかかってしまった。だとすれば、コーディネーターがいる婚活サービスで、自分と相性の良い男性を見つけてもらうのはどうだろうか? そんな考えから、私は婚活をスタートさせた。
全身ブランド品とApple製品まみれの「見栄はり君」
登録したのは、古くから結婚相談所を運営している“婚活業界の老舗”。アプリを利用して自由に相手を探すこともできるし、希望すればコーディネーターを通して希望条件に合った相性の良さそうな男性を仲介してもらうこともできる。
2度とダメンズに引っかからないように念には念を入れて、コーディネーターによる仲介を依頼することにした。
希望する男性の条件は、年齢25〜40歳で年収400万以上。会社員で共働き歓迎の人。控えめな条件だが、幸い真美は看護師で年収は700万円近くある。今はとにかく未来のクソ彼氏候補にならない、平凡なサラリーマンとの出会いが切実に欲しいのだ。
婚活サービスに登録して1週間後、担当コーディネーターの鈴木さんから、一人の男性を紹介したいと電話があった。
『今、お相手の男性のプロフィール送ったんですけど、見れますか?』
画面を見た瞬間、自分の目を疑った。見栄ハリオ、35歳。4大卒で大手銀行の営業マン。年収は約1000万と書かれている。こんな絵に描いたような“ハイスペックリーマン”が、なぜ私何かとマッチングしたのだろうか。
「え、えっと……ずいぶん条件が良さそうな男性なんですけど、また何で私に?」
『お相手の方も共働き希望で、年収の条件も石原さんとぴったりだったんです』
「ああ、なるほど」
『もし興味があれば、顔写真付きの詳細プロフィールを拝見いただいた上で、気になる場合は弊社のカフェスペースで顔合わせができますが、どうされますか?』
「ぜひ、お顔拝見したいです」
さっそく届いた顔写真を開いてみると、俳優の谷原章介と誰かを足して半分に割ったような“雰囲気イケメン”だった。
どことなくナルシストっぽさを感じる表情が一瞬気になったものの、先入観で判断してはいけないと自分に言い聞かせた。何せ婚活を始めて、一発目の顔合わせなのだ。とにかく、会ってみよう。話はそれからだ。
――そして、顔合わせ当日。
顔合わせの時間は45分。初回は、婚活サービスのオフィスに併設されているカフェスペース内のみで会うことができる。実際に会ってみて気に入れば、連絡先を直接交換できるという仕組みだ。
「あ、石原さんこんにちは!お相手の男性、もうお見えになられていますよ」
カフェスペースに案内されると、見栄さんらしき男性がMacBookで作業をしていた。凄まじい速さのタイピング音が鳴り響いている。
「すみません! 少し早かったですよね」
「いえ、大丈夫です。ちょっと待ってくださいね」
間近で見る見栄さんは、スマートなサラリーマンといった印象で、写真通りの雰囲気イケメンだった。作業がひと段落ついたのか、先ほどまでの真剣な表情から一転、営業マンらしい親しみのある笑顔で話し始めた。
「えっと、石原さんですよね」
「はい。お仕事お忙しい中、今日はありがとうございます」
「いえ、ちょっと急ぎの用件があっただけなので。こちらこそです」
顔合わせ時間はきっかり45分。後悔のないように、初っ端から一番聞きたかった質問を見栄さんにぶつけることにした。
「いきなりで失礼ですけど、すごくおモテになりそうなのに…何で婚活されているんですか?」
「両親がそろそろ結婚しろってうるさくて(笑)それにもう2年くらいずっと彼女もいないんですよね」
正直、歯切れの悪い返答だなと思った。こんなハイスペックリーマンを世の女子たちが2年も放っておくなんて考えられない。理由があるとすれば、それは
見栄さんが“ダメンズ”だからなのではと、つい疑ってかかってしまう。
(ああ、余計なことを考えすぎて会話の流れが途切れてしまった。ここは無難なトークで繋いでおこう)
「お休みの日は何をされているんですか?」
「ジムに行くか、大体ショッピングですね」
「へ〜、どこに買い物に行くんですか?」
「ヴィトンですね。父親がVIPなので、優待で安く買えるんですよ」
(年収1000万の雰囲気イケメンというだけで希少価値があるのに、まさかの御坊ちゃまだったとは……。ますます雲行きが怪しくなってきた)
「ヴィトン以外ではお好きなブランドはないんですか?」
「Appleですね。ガジェット系は一通り持ってます。このMacBookも、本当は会社支給のパソコンがあるんですけど、日本製ってどこか見た目が野暮ったくて好きじゃないんですよね」
そう答えた見栄さんは、ドヤ顔をしているように見えた。もしかして、もしかしなくても、『MacBookで仕事している俺、カッコいい』とか思っちゃうタイプなのだろうか。
「へー。こだわりがあるんですね」
「時計だって、2〜3万のショボいブランド時計を着けているより、AppleWatchの方がずっとスマートじゃないですか」
「やだ私、今日SEIKOで買った3万円の時計つけてますよ(笑)」
「そうなんだ」
自分が気に入っているもの以外はダサいという感覚の持ち主なのだろうか。相手が傷つきそうな発言をした後、謝らないという点も気になる。きっと、プライドが高いんだろう。
(まずい。冷静に考えれば考えるほど“ダメンズ”の匂いがプンプンしてきた)
「須磨さんは、どんな女性がタイプなんですか?」
「一緒にいて恥ずかしくない人ですかね」
「例えばどんな?」
「ちゃんと安定した収入があって、外見も手入れが行き届いている人。僕がそうなので、隣にいる人には同じようにいて欲しいですね」
別に言っていることは常識の範囲内なのに、言い方に腹が立つ。揚げ物食べた後みたいに胃もたれするような感覚だ。
「そういう意味で、真美さんはクリアです」
「あ、ありがとうございます」
(ダメだ、もう帰りたい。開始10分も経っていないけど、今すぐ帰りたい!)
言うまでもなく、その後の35分間はかなり地獄だった。針のむしろにかけて、“ハリオのむしろ”状態だったとでも言っておこうか。無論、見栄さんの連絡先は聞かずに顔合わせは終了した。
帰りがけに受付によって通行証を返すと、担当コーディネーターの鈴木さんが声を掛けてきた。
「あ、石原さん! 見栄さんいかがでしたか?」
「いやー。あの、ちょっと想像と違いました。なんて言えばいいか……。私、プライドが高すぎる人ってちょっと苦手で」
「そうだったんですね。見栄さんも今回が初顔合わせだったので、こちらも把握できていない部分があって申し訳ありません。次こそは必ず石原さんと相性の良さそうな男性をご紹介するので、もう一度だけチャンスをいただけませんか?」
「わかりました」
(次こそは、良いご縁がありますように……)
ユニクロ&格安SIM派の「スマート節約さん」
見栄との顔合わせから5日後、鈴木さんから次の男性を紹介したいと連絡が入った。マッチングしたのは、飲料メーカーでデザイナーをやっている37歳の男性だった。年収は700万ほど。
『須磨さんという方なんですけど、プロフィール見てみていかがですか?』
「言いにくいんですけど、彼女いない歴5年っていうのがちょっと引っかかりました」
どの口が言うんだとツッコミが飛んできそうだが、5年となるとさすがに前回の見栄のように性格に難があるのではないかと疑ってしまう。
『ご本人曰く、仕事に夢中になっていたらあっという間にアラフォーになってしまったと仰っていました。ほかにも事情があったようで、気になるならお顔合わせの際に聞いてもらって構わないとも言っていました。どうされますか?』
「うーん、そうですね。一度、お会いしてみます」
前回、雰囲気イケメンの写真に惹かれてしまった反省を活かし、今回はあえて顔写真は見ずに会うことにした。一種の願掛けのようなものだろうか。これで好みだと感じたら、加点方式で須磨さんの魅力を知ることができる。
――そしてやってきた、婚活2戦目の日。
顔合わせ用のカフェスペースに向かうと、優しそうな顔立ちの男性が座っていた。
「もしかして、須磨さんですか?」
「はい、石原さんですよね? 今日はよろしくお願いします」
スッと椅子を立ち上がった須磨さんは、思っていたより身長が大きかった。恐らく180cm近くはあるだろうか。ファッションもシンプルだけど洗練されていて、センスが良い。
「須磨さん、オシャレですね」
「いやいや、全然ブランドとか詳しくないですよ。このニットも、ユニクロで3000円でしたし(笑)」
「え、そうなんですか? 全然見えない!」
(うわ〜! ブランドに詳しくないのにオシャレに見える人とか本当にいるんだ。実に羨ましいし、けしからん)
「僕、お金をかけないところは基本ケチなんで(笑)このiPhoneSE(第二世代)も格安SIMに乗り換える時に中古で買いましたし」
「へ〜そうなんですね! 私も最近、LIBMOに乗り換えました」
「あ、僕もLIBMOですよ。偶然ですね。節約して、早くマンション買いたいんですよね。老後までローンや家賃を払う生活って不安じゃないですか」
「わかります!」
「大学生の頃に親父がリストラに会って、その時に借りた奨学金が結構な額で、返済するのに苦労したんです。だから、今を楽しみながらも将来の不安をひとつ一つ、無くしていきたいなって」
(そうそう、私が出会いたかったのは須磨さんみたいな堅実なタイプなのよ。チョモランマみたいにプライドが高いApple製品まみれの男を紹介されて、一瞬選んだ婚活サービスを間違ったと思ったけど、やっぱり私の直感に狂いはなかった……!)
「失礼ですけど、須磨さん普通にモテそうなのにどうして5年間彼女をつくらなかったんですか?」
「実は僕、半年前までいわゆるブラック企業に勤めてたんです。徹夜も休日出勤も当たり前にあって、休みもロクになくて。単純に彼女探している暇がなかったんですよね(笑) あ、今の会社はめちゃくちゃホワイトですよ」
苦労した経験をあっけらかんと話す須磨の強さに、真美は自然と心惹かれていった。
「あ、もう後5分で顔合わせ時間終了ですね。まだ話したいなー」
(ヤダ、ちょっと不意打ちやめてよ。キュンとしたじゃない……!)
「石原さん、もしよければ今度外でランチデートしませんか?」
「ぜひ、よろしくお願いします。」
「よかった。じゃあLINE交換しましょう」
(須藤さん、本当に素敵な人だった……。こんなに時間を忘れて話に夢中になれた相手に出会えたのは、いつぶりだろう)
見栄張り君と偶然の再会。そして、地獄のお食事会へ
「あ、石原さん。須磨さんと実際に会ってみていかがでしたか?」
今回の仲介には自信があったのか、真美に感想を聞く前からコーディネーターの鈴木さんは晴れやかな表情をしている。
「すごく素敵な人でした。次、ランチデートの約束をしたんですよ。鈴木さんが背中を押してくれたおかげです!」
「いえ、そんな。須磨さんにお会いした時、ピンと来たんです。きっと須磨さんは石原さんみたいな方と相性が良いだろうなって」
「さすが、リアルキューピッド!」
「ありがとうございます(笑)」
3年も恋愛から遠ざかっていた女に、婚活はハードルが高すぎると思っていたけれど、勇気を出して飛び込んでみて正解だった。
ご機嫌でその場を後にしようとしたその時、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「あれ、真美ちゃん?」
そこにいたのは、見栄だった。いつ下の名前で呼ぶことを許可したんだよとツッコミそうになるのを抑えながら、真美は愛想笑いで対応した。
「こんにちは〜」
「よかったらこの後ご飯いかない?」
「えっと……」
(考えろ、考えろ私。角の立たない断り方、ハリオのプライドを傷つけない返事を導き出すのよ)
「私、さっき食べてきたばかりなので、また……」
グルルルルッ〜。
(ああ、もう。どうしてこんな時に限って!)
どうやら私の腹の虫は空気が読めないらしい。
「はは、お腹空いてるみたいだね。近くにおいしいイタリアンあるから食べ行こうよ」
致し方がない。断れる雰囲気でもないし、サクッと食べて解散しようと、真美は腹を括った。
(というかこの人、何で誘ってきたんだろうか。顔合わせした時は、結局連絡先も交換しなかったのに……)
見栄が選んだのは、小さなビルの最上階と屋上に店を構えるカジュアルにイタリアンを楽しめるお店だった。大人の隠れ家といった感じで、雰囲気が良い。
「ここは窯焼きピッツァがおいしいんだ。よければ適当におすすめを頼むけど……」
「お任せしてもいいですか?」
(グッジョブ、真美。できる限り今はハリオのプライドを傷つけずに平和に過ごしたい)
10分ほど待つと、これぞイタリアンの定番といったカプレーゼと、熱々のマルゲリータが運ばれてきた。
熱々のとろ〜りチーズがのったマルゲリータをはふはふと頬張る。
(確かに、おいしい。食事は誰と食べるかでそのおいしさが決まるともいうけれど、空腹とチーズがあれば、そんなの関係ねー。)
「ていうか真美ちゃん、スマホ変えたの?」
「よく気づきましたね。LIBMOっていう格安SIMに乗り換えたので、ついでに機種も中古だけど新しくしたんです」
「え、中古? 人が使ってたスマホ使うの、俺はちょっと嫌だな……」
「ちゃんとクリーニングされてるし、言われなきゃ中古ってわからないくらい綺麗ですよ」
「ふーん。でも格安SIMって繋がらなくなることとかあったりしないの? ちょっと信頼にかけるっていうか、大手キャリアの方が安心じゃない? 何か、安かろう悪かろうのイメージだけどな〜」
(まだ突っかかってくるの? この人、想像以上に面倒くさいな……)
「さっきから何なんですか? 格安SIMってちょっと信頼にかけるよね? じゃねーわ。大体、ちょっと値が張るブランドだったら疑いもせず信用しちゃうような男の癖に。そんなんじゃ、これからの時代生き残れると思えないんですけど!」
「え……」
(ああ、完全にやらかしてしまった)
私は昔から、キレると心の声が外に漏れてしまう癖があるのだ。
「えっと見栄さん? すみません言い過ぎちゃって私……」
「…いや……」
どうやら完全にノックダウンのようだ。
(まあこれでもう誘ってくることは2度とないだろうし、ピザはおいしかったし、結果オーライってことで)
令和の時代は、スマート節約さんみたいな男がモテる!
プロフィール詐称にヒモ男、詐欺師にプライドチョモランマ男と、ダメ男祭りでお送りした今回のお話。筆者の推しメンは、もちろん須磨さん!
先行きが不透明な時代が続く今、モテるのはブランド品を身に付けてドヤっている男ではなく、将来を見据えて格安スマホで月々の固定費をスマートに抑えられるような堅実な人ではないでしょうか。
「iPhoneじゃないから」「ド●モじゃないから」と、格安スマホであることを隠している皆さん。ぜひ、今後は胸を張って格安スマホを使っていることを上手に自己アピールに使ってみてくださいね。
▷真美とセツヤが使っていたLIBMOをチェックしてみる
▷セツヤが使っていたiPhone SE(第二世代)をチェックしてみる
https://www.libmo.jp/contents/iphone_used/
▷真美の親友「理沙子」の物語はコチラから
https://www.libmo.jp/option/denwa/