聴覚や発話に困難が生じる方で、緊急時や仕事など日常生活の連絡を不便に感じる方もいるのではないでしょうか。近年ではお客様とのやり取りを、メールやFAXに対応する店やサービスも増えましたが、返事に時間がかかってしまったり、やり取りが多いと手間がかかったりすることがデメリットでした。
そこで、2021年7月から、聴覚障害者等を対象とした「電話リレーサービス」が公共インフラとして開始されました。このサービスを利用することで、メールやFAXのように時間がかからず、即座に連絡を取れます。
この記事では、電話リレーサービスの内容や使い方を詳しく解説します。また、2021年7月分から電話の利用料金に加算される電話リレーサービス料について、金額や理由なども合わせてご紹介します。
「電話リレーサービス」とは?
電話リレーサービスとは、聴覚障害者や難聴者、発話が困難な方と、そのほかのきこえる人との電話を、オペレーターが中継することで双方向へ伝達を行うサービスです。メールやSMSに続くコミュニケーション手段として、聴覚障害者等を総合的に対象としています。
電話は、日常生活において欠かせない連絡手段です。しかし、音声通話によって意思疎通を図るため、聴覚障害者等は介助を受けなければ電話を利用することが困難でした。このような背景を踏まえて、電話リレーサービスは民間で提供されることになりました。
しかし、より持続的なサービスとして普及させるために電話リレーサービスを公共化させる動きが高まり、2020年に「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が成立したのです。この法律により、電話リレーサービスは公共サービスとなりました。
サービスを提供するのは、国の指定を受けた「日本財団電話リレーサービス」です。公共サービスとして普及させるために、費用は交付金を利用しています。交付金は、電話番号を持つすべての人が負担対象となり、1つの電話番号につき「電話リレーサービス料」が上乗せされる仕組みとなっています。
ここでは、そんな電話リレーサービスの仕組みや、実際に想定される利用シーンなどについてご紹介します。
電話リレーサービスの仕組み
画像引用:日本財団電話リレーサービス
電話リレーサービスは、オペレーターが中継、通訳を行うことで双方向へ情報を伝達します。聴覚障害者等の方はネット回線を経由して手話や文字を送り、きこえる人は電話回線を経由して音声で伝達する仕組みです。
手話を利用する際にはテレビ電話を経由し、文字を利用する際にはチャット機能を経由することで、通話相手と双方向のコミュニケーションが行えます。
聴覚障害者等の方から送信された手話や文字や音声は、電話リレーサービスのオペレーターへ届き、通訳が行われてから通話相手へ伝達されます。そのため、電話リレーサービスを利用する際には、オペレーターが通訳を行うことが通話開始時点でアナウンスされるようになっています。
なお、通訳業務は、基本的に電話リレーサービス提供機関が行いますが、外部の手話通訳事業者に委託される場合もあるようです。
この仕組みにより、聴覚障害者等であっても介助の必要なく、自ら電話をかけ相手とのやり取りができます。
また、聴覚障害者等の方から電話をかけるだけではなく、聴覚障害者等以外の方から電話を受けることも可能です。電話リレーサービスの利用者へ付加される電話番号を家族や友人などに共有することで、電話リレーサービスを経由して通話ができます。
電話リレーサービスの利用イメージ
電話リレーサービスは、公共インフラ化に伴い、日常会話から緊急時まで、24時間365日いつでも活用できるようになりました。メールやSMSによる連絡が困難である際に、電話リレーサービスは有効な連絡手段として活用できるでしょう。
例えば、深夜帯に発熱した場合や、事件・事故に巻き込まれたときなどの緊急連絡もスムーズに行えます。病院に連絡する際は、電話番号をあらかじめ伝えておけば病院からの連絡を受けることも可能です。なお、電話リレーサービスから緊急時に発信できる番号は110、118、119の3種類です。
また、仕事先の相手とのやり取りや、学校や塾などの教育機関からの連絡もできます。子どもの体調不良や、取引先とのやり取りが即座に把握でき、効率的に動けるでしょう。さらに、家族や友人と話したいときに連絡が取れます。そのほか、銀行やクレジットカード会社への問い合わせ、宅急便の再配達など、日常生活で欠かせない連絡を即座に取ることができるようになります。
電話リレーサービスの使い方
電話リレーサービスの登録受け付けは、2021年6月から開始されています。利用登録を行うには、電話リレーサービスの公式アプリをダウンロードし、手続きを行いましょう。手続きはスマートフォンあるいはタブレット端末から行えるようになっており、登録完了後はパソコンからも電話リレーサービスへのログインが行えるようになります。
ただし、パソコンからは利用登録は行えないため注意しましょう。新しく利用登録を行う際には、スマートフォンあるいはタブレット端末が必要です。
なお、郵送での受け付けは現在準備中となっており、受付開始日は未定とされています。郵送の受け付けが開始された際は、日本財団電話リレーサービスのホームページ上で告知されるため、確認しましょう。
登録方法
電話リレーサービスのアプリを経由して利用申請を行う際は、本人確認書類と障害者手帳(聴覚・言語)が必要です。障害者手帳(聴覚・言語)を所有していない方は、聴覚や音声・言語機能に障害があることを証明する書類と本人確認書類が必要になります。
利用申請は、アプリ内で表示される案内に沿って操作を行いましょう。なお、未成年の方が登録を行う場合は、登録者本人と法定代理人の本人確認書類が別途必要です。利用申請が許可された場合、電話リレーサービス用の電話番号と初回用パスワードが後日郵送されます。もし利用許可が下りなかった場合は、アプリ内で表示された理由に応じて再度利用申請の手続きが必要です。
料金
電話リレーサービスの利用登録は、「月額料あり」「月額料なし」の2種類からプランを選択する必要があります。月額料が発生するプランは、1番号あたり178.2円が月額でかかります。さらに、固定電話への発信する際は、1分5.5円、携帯電話への発信では1分33円(すべて税込)が発生します。
一方、月額料無しのプランは、固定電話への発信が1分16.5円、携帯電話への発信は1分44円(すべて税込)です。いずれのプランでも、フリーダイヤルあるいは緊急通報への発信は無料で行えます。また、聴覚障害者等以外の方が電話リレーサービスの番号へ電話をかける際は、通常のIP電話へ発信する場合と同じ通話料が発生します。電話リレーサービス料金の支払いは、クレジットカード決済もしくはキャリア決済(au・NTTドコモ・ソフトバンク)の設定が必要です。
ただし、オペレーターが通訳を行う関係上、電話リレーサービスによる通話は、通常の電話よりも比較的時間がかかります。通話料は電話を発信した方の負担になるので、通話料を抑えたい場合は「内容を要約する」「文字入力を素早く行う」といった工夫が必要です。
ログイン・発信
実際に電話リレーサービスを使用するには、利用申請の許可が下りた際に交付される電話番号とパスワードを入力してログインする必要があります。ログインはスマートフォン・タブレット端末・パソコンから実施可能です。
電話をかける際は、相手の番号を入力、発信したあと、手話と文字のどちらで会話を行うかを選択します。操作が完了した段階でオペレーターの呼び出しが開始され、オペレーターと電話が繋がると通話相手の呼び出しを開始するというシステムです。通話相手と電話が繋がった時点で、電話リレーサービスを利用した通話であることをオペレーターが通話相手にアナウンスします。通話終了時はアプリ内の「終了」ボタンを押し、通話相手と利用者の電話を切断します。
なお、通話相手やオペレーターへ電話が1分間以上繋がらない場合、後ほど掛け直すことが電話リレーサービスの公式ホームページで推奨されています。利用者の通信環境やサービス全体の利用状況などによっては電話が繋がりづらいことがあるため、時間を置いて掛け直すと問題が解決する場合があるためです。
また、アプリのログインに10回失敗すると、自動的にロックが掛かってしまうため注意しましょう。ロックが掛かるとアプリの利用ができません。サポートセンターへ連絡して、ロック解除の手続きを行いましょう。また、パスワードを忘れた場合は、アプリ内でパスワード再設定を行えます。
電話リレーサービスの詳しい使い方についてはこちらもご確認ください
電話リレーサービス開始に伴う料金負担について
電話リレーサービスの公共インフラへの移行に伴い、LIBMOでは2021年7月利用分から電話リレーサービス料の徴収を開始しています。前述した「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が制定、施行されたことで、電話リレーサービス支援機関への交付金支払いが必要になったことが料金徴収を実施する主な理由です。
ここでは、電話リレーサービス料の使い道や、料金負担の対象になるユーザーに関して解説します。
電話リレーサービス料の使い道について
支援機関によって電話提供事業者から徴収が行われた電話リレーサービス料は、法律に基づいて電話リレーサービスの運用資金として活用されます。主な使い道は、オペレーターの人件費や通訳業務に用いる設備費用などです。なお、電話提供事業者から徴収される金額は、保有する電気通信番号の数に応じて決定されます。
電話リレーサービス料の金額計算、および徴収は支援機関が実施します。実施機関が提出した資料をもとに交付金の計算が行われ、総務大臣の認可を受けることで交付金額が確定します。支援機関によって電話提供事業者から徴収された負担金は、電話リレーサービスの運用に用いる交付金として提供機関へ納付されるという仕組みです。
また、電話リレーサービスの支援機関、提供機関の指定は総務大臣によって行われています。支援機関は一般社団法人電気通信事業者協会、提供機関は前述した一般社団法人電話リレーサービスです。
LIBMOを含む通信サービス利用者の料金負担について
支援機関に対する電話リレーサービス料の納付は、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」によって特定の電話提供事業者に義務付けられています。対象となる電話提供事業者は、前年度の売上が10億円以上であり、総務大臣から電気通信番号(携帯番号)の指定を受けて最終利用者へ付与している事業者です。
電話リレーサービス料を調達するうえで、特定電話提供事業者は自社ユーザーの利用料金に一定金額を加算する形式を採用しています。つまり、特定電話提供事業者が提供する固定電話・携帯電話・IP電話などのサービスを利用している方は、保有する電話番号数に応じて電話リレーサービス料を負担してもらうという仕組みです。
LIBMOでは、電話リレーサービス支援機関が公表した番号単価に相当する金額を、自社ユーザーに負担してもらう形式を実施しています。徴収した負担金は、LIBMOから特定電話提供事業者へ支払いを実施したあと、支援機関を経由して電話リレーサービス提供機関へ納付されます。
なお、番号単価は交付金額やサービスの提供費用、収益額といった数値と電気通信番号の総数を用いることで算出されます。参考として、2021年度における番号単価は、1ヵ月あたり1.1円です。番号単価は電話リレーサービス支援機関によって算出されており、交付金額と合わせてホームページで公表されています。
LIBMOを含む電話提供事業者では、2021年度は電話番号1個に対して毎月1.1円のご負担を7ヶ月間にわたってお願いすることになっています。なお、電話リレーサービス料は毎年計算が行われるので、2022年度以降は金額が変わる可能性があります。
2021年度電話リレーサービス負担額 |
|
2021年7月~2022年1月 |
1.1円 |
2022年2月 |
0円 |
2022年3月 |
0円 |
まとめ
電話リレーサービスは聴覚障害者等の方を対象としており、オペレーターを経由して通話が行えるサービスです。利用登録を行うには、電話リレーサービス公式ホームページからアプリをダウンロードする必要があります。
利用契約を検討する際には、当記事を参考にして登録方法や通話料などを把握する所から始めることをおすすめします。
また、LIBMOを含む通信サービスの利用者は、毎月1.1円の電話リレーサービス料を支払う必要があります。公共インフラとしての電話リレーサービスを維持するためのものとなります。