最近、何かと話題にあがることの多い「eSIM」。
実はeSIM対応端末は、iPhoneXSが発売された2018年頃に登場していました。
ただ、日本国内におけるeSIMの普及率はなかなか伸びず、「SIMロック禁止」なども含めた総務省の後押しによって2021年夏以降に大手キャリアでも導入が始まったことで、徐々に浸透していくのではないかとみられています。
そうした背景から、eSIMについて詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
実は、eSIMの特長を知っておくことで、自分に合った通信サービスを契約できるようになり、結果的に通信費の節約につながるケースもあります。
今回は、「eSIM」の便利な点をメリットやデメリットとともに解説します。
- eSIMとは?
- eSIMはどういったケースで便利?メリットとともに解説
- eSIMを利用する際のデメリット・注意点とは?
- デメリット②:対応する機種が限定される
- eSIMの利用開始方法や費用
- eSIMが利用できる主な端末とは?
- まとめ
eSIMとは?
「eSIM」とは、スマートフォンの端末内に内蔵された本体一体型SIMのことです。
従来のSIMカード同様に小さなチップの形をしていますが、端末本体にあらかじめSIMが埋め込まれているので、端末から抜き差しをする必要はありません。
そもそもSIMとは何?
SIMとは、Subscriber Identity Moduleの頭文字を略したものです。
小型のカード型のものはSIMカードと呼ばれ、加入者を特定するための契約者情報が記録されていて、この情報と通信事業者のサービスを結び付けて通信・通話を可能にしています。
SIMカードの主な役割は、以下のとおりです。
・契約者の識別番号、電話番号、メールアドレスを記録する
・電話回線によって通話、インターネット、SMS機能が使える
・SIMカードの差し替えによって端末の機種変更ができる
スマートフォンに挿して使う方法が広く知られていますが、タブレットやルーターといった通信デバイスに挿入してデータ通信を行うこともできます。
SIMカードは、3種類の機能を組み合わせて契約することが一般的です。
・音声通話
・データ通信
・SMS
主な組み合わせは、以下のとおりです。
・データ通信のみ:データ通信専用
・データ通信+SMS:SMS機能付きデータ通信SIM
・音声+データ通信+SMS:音声通話機能付きSIM
上記の機能の組み合わせは、通信事業者が提供するサービス内容によって異なることもあります。
eSIMはカード型のSIMカードとはどう違う?
eSIMは、カード型のSIMカードと違って、端末への抜き差しが不要です。
通常のSIMカードは、端末に挿し込まないと通信事業者が提供するサービスを利用することができません。
一方のeSIMは、SIMカードの到着を待つ必要がないため、通信事業者のウェブサイトやアプリから通信プランを契約した直後からサービスを開始することができます。
eSIMの対応が徐々に拡大している
eSIMは、大手キャリアが採用するなど徐々に対応が拡大しています。
対応している大手キャリアは、以下のとおりです。
キャリア |
サービス名 |
プラン名 |
利用料金 |
ドコモ |
Ahamo |
- |
2,970円(税込)/月 |
au |
povo2.0 通常プラン |
スマートスタートプラン(フラット)以外 |
0~7,238円(税込)/月 |
ソフトバンク |
- |
メリハリ無制限 ミニフィットプラン+ スマホデビュープラン |
7,238円(税込)/月 3,278~5,478円(税込)/月 2,178円(税込)/月 |
楽天 |
楽天モバイル |
UN-LIMIT VI |
0~3,278円/(税込)月 |
eSIMは、大手キャリアだけでなく、格安SIMを提供するMVNO事業者でも普及が進んでいます。大手キャリア傘下のUQモバイル、Y!mobile以外にも、IIJmioやLinksMateなどでも申し込みが可能です。
eSIMの普及は、今後さらに拡大していくことが予想されます。
eSIMはどういったケースで便利?メリットとともに解説
eSIMが便利なケースは、以下のとおりです。
1. 1台のスマホで複数回線を使い分けたい
2. オンラインで素早く手続きを済ませたい
3. 海外へ行くことが多い
上から順番に見ていきましょう。
ケース①:1台のスマホで複数回線を使い分けたい
eSIMとSIMカード(物理SIM)の両方を同時に使える「デュアルSIM」と呼ばれる機種であれば、1台のスマホで2つの回線を使い分けることができます。
たとえば、通話プランが安いA社の回線をSIMカードで契約して、データ通信が安いB社をeSIMで契約するような使い方もできます。用途によっては、A社だけを利用するよりもお得に利用することも可能です。
自分の使い方に応じて適したキャリアやプランを選択することで、スマホ代の節約にもつながります。
ケース②:オンラインで素早く手続きを済ませたい
SIMカードのように端末への挿入が不要なことから、eSIMの申し込みはオンラインですぐに完結できます。
従来の契約時のように店舗へ足を運んで手続きを行う必要はありませんし、郵送でSIMカードの到着を待つ必要もありません。
申し込み後は通信事業者から発行されるURLやQRコードを使用することで、簡単に手続きを済ませることが可能です。
オンラインで手続きができることから、契約事務手数料が不要であることが多いほか、店舗へ行くまでに必要な時間や交通費を節約することもできます。
申し込みを完了させた直後からサービスを利用することも大きなメリットといえるでしょう。
ケース③:海外へ行くことが多い
eSIMはオンライン上で全て完結できるので、時間や手間はかかりません。
従来のSIMカードは、海外へ渡航する前にネットで購入しても現地の空港やコンビニで購入しても届くまでに時間がかかったり手間がかかったりしました。
ほかにも、WiFiルーターをレンタルする場合も事前にネットで予約をして、自宅への郵送や当日に空港で手続きをして受け取る必要があったのです。帰国後は返却の手間も必要ですし、端末の紛失や破損にも注意しなければなりません。
一方、eSIMの手続きはネット環境さえあれば渡航前でも渡航後でも手続きできますし、購入から数分で利用できるようになります。
仕事が忙しくて申し込み手続きの余裕がない場合でも、手軽に手続きできる点はeSIMならではの魅力です。
eSIMを利用する際のデメリット・注意点とは?
一方のeSIMを利用する際のデメリットや注意点もご紹介します。
1. 取り扱っている通信事業者が少ない
2. 対応する機種が限定される
3. SIMロックを解除する必要がある
メリット同様に、上から順番に説明していきます。
デメリット①:取り扱っている通信事業者が少ない
eSIM市場は発展途上なので、取り扱う事業者が少なく選択肢は限定されます。
eSIMを取り扱う通信事業者は、以下のとおりです。
eSIMを取り扱うキャリア |
eSIMを取り扱うMVNO |
・ドコモ ・au ・ソフトバンク ・楽天モバイル |
・UQモバイル ・Y!mobile ・IIJmio ・LinksMate ・BIC SIM |
※2021年11月現在
大手キャリアの中では楽天モバイルがいち早くeSIMの取り扱いを始め、残り3社も2021年7月から9月に追従しましたが、MVNOまで広まっていないのが現状です。
取り扱う通信事業者が少ないので、自分にとって最適なサービスを選ぶのは難しいといえます。ただし、今後はeSIMを取り扱う通信事業者は増えることが予想されます。
デメリット②:対応する機種が限定される
eSIMに対応するスマホの機種も少ないので、選択肢は限定されます。
iPhoneであれば、iPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XR 以降のシリーズならSIMカード+eSIMのデュアルSIMに対応しているのですが、AndroidのeSIM対応機種は少ないのが現状です。
たとえ魅力的なeSIMのプランを提供する通信事業者がみつかったとしても、eSIMに対応していないスマホを使っているのであれば、eSIM対応のスマホに買い替えない限りサービスを利用することはできません。
また、eSIMを利用する予定でキャリアやMVNOで販売されているスマホを購入する際も、機種によっては同じシリーズでもeSIMに対応していない場合があるので注意が必要です。
たとえば、楽天モバイルで取り扱う「AQUOS sense4 lite」はeSIM対応の機種ですが、「AQUOS sense4 plus」はeSIMに対応していません。
デメリット③:スマホのSIMロックを解除する必要がある
eSIMの注意点としては、スマホのSIMロック解除が必要なことです。
キャリア版のeSIM対応機種を利用していて、端末を買い替えずに別の通信事業者のeSIMを契約する場合には、スマホのSIMロックを解除しなければなりません。
SIMロック解除なしでは、eSIMを利用することができないからです。
キャリアによってSIMロック解除の方法が異なるので、各キャリアのホームページや店頭などで確認/対応しておきましょう。
eSIMの利用開始方法や費用
eSIMを利用開始するまでの大まかな手順は、以下のとおりです。
- 希望する通信事業者のWEBサイトから申し込む
- 申し込み後に届くメールから専用サイトへ接続してアクティベーションを行う
- スマホの設定からモバイル通信を行う
- 回線の設定を行ってeSIMを使えるようにする
基本的な流れはどのサービスでも同じですが、通信事業者やスマホの機種によって手順が異なる場合もあります。実際に申し込む際には、書類やメールなどで送られてくる通信事業者のマニュアルに従って設定しましょう。
eSIMの手数料ですが、事業者によっては、新規契約、機種変更、eSIM再発行などの際に2,000円前後の手数料が発生することもあります。
一部事業者では条件付きで無料発行ができる場合もありますので、契約の際は詳しく確認することをおすすめします。
eSIMは通常のSIMカードと費用面で異なる?
大手キャリアの場合は、eSIMプランにしても費用が変わることはありません。
しかし、MVNOであれば費用が変わる通信事業者もあります。
たとえば、IIJmioの場合はデータ通信のみのeSIMプランが用意されていますが、SIMカードのデータ通信のみのプランより安い価格が設定されています。
IIJmioの料金 |
2GB |
4GB |
8GB |
15GB |
20GB |
SIMカード |
748円 |
968円 |
1,408円 |
1,738円 |
1,958円 |
eSIM |
440円 |
660円 |
1,100円 |
1,430円 |
1,650円 |
※すべて税込の月額料金
上記のように通信事業者によって費用の差が異なるので、希望する通信事業者の公式サイトから確認したうえで検討しましょう。
eSIMが利用できる主な端末とは?
eSIMに対応した主な端末として、以下のスマートフォン主要2シリーズで、2021年11月現在eSIMが利用できる端末についてご紹介します。
1. iPhoneシリーズ
2. Pixelシリーズ
上から順番に見ていきましょう。
iPhoneシリーズ
iPhoneシリーズは、2018年に発売された機種からeSIMに対応しています。
以下は、eSIM対応の機種一覧です。
機種名 |
発売日 |
iPhone13シリーズ |
2021年9月24日 |
iPhone12シリーズ |
2020年10月23日/2020年11月13日 |
iPhoneSE(第2世代) |
2020年4月24日 |
iPhone11シリーズ |
2019年9月20日 |
iPhoneXS・XRシリーズ |
2018年9月21日 2018年10月26日 |
新規でiPhoneを購入する場合は、eSIMが使える機種しか存在しないので特に心配する必要はないでしょう。
Pixelシリーズ
GoogleのPixelシリーズは、2019年以降の機種がeSIMに対応しています。
機種名 |
発売日 |
Google Pixel 5a(5G) |
2021年8月26日 |
Google Pixel 5 |
2020年10月15日 |
Google Pixel 4a(5G) |
2020年10月15日 |
Google Pixel 4a |
2020年8月20日 |
Google Pixel 4/4 XL |
2019年10月24日 |
Pixel 3以前の端末は対応していないので、中古で購入する場合や以前の端末を使い続けている場合は注意してください。
まとめ
eSIMは、通信事業者側にとってSIMカードのように郵送や手続きの手間がかからないので、安くサービスを提供することができます。同じく利用者側にとっても、郵送の到着待ちや手続きの手間がかからないので、メリットは多いといえます。
今はまだeSIMを取り扱うMVNOが少なく対応する端末も少ないですが、今後は大きく拡大することは間違いありません。eSIMを取り扱う通信事業者が増えれば競争が起こるので、より付加価値の高いサービスが生まれることでしょう。