今年の夏も猛暑が予想されます。夏は、熱中症で救急搬送される患者が増える時期でもあり、熱中症対策にはエアコンの活用や適度な休憩と水分補給が欠かせません。昨今、これらの熱中症対策に加えて、スマホアプリやLINEでできる熱中症対策が注目されています。
本記事では、熱中症とその対策、アプリのさまざまな便利機能を紹介します。夏本番を迎える前にチェックしておきましょう。
厳しい暑さ!夏の気温は上がっている?
夏の暑さは年々厳しくなっているように感じますが、実際のところどうなのでしょうか。気象庁のWebページを確認すると、以下のように記載されていました。
「2023年夏(6〜8月)の日本の平均気温の基準値(1991〜2020年の30年平均値)からの偏差は+1.76℃で、1898年の統計開始以降、2010年を上回り最も高い値となりました。日本の夏(6〜8月)平均気温は、さまざまな変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり1.25℃の割合で上昇しています。」
引用:日本の夏(6〜8月)平均気温偏差の経年変化(1898〜2023年)|気象庁
このように、夏の気温は長期的に見て上昇傾向にあることがわかります。
1日の最高気温が30℃を超えると真夏日、35℃を超えると猛暑日と呼ばれますが、2022年に日本気象協会が酷暑日という言葉を命名しました。
1日の気温が40℃を超えた場合に酷暑日と呼ばれるようになり、実際に2023年の福島県伊達市梁川、石川県小松市で観測されています。
このような猛暑を引き起こす現象として挙げられるのが「ラニーニャ現象」や「ヒートアイランド現象」「地球温暖化」です。
なお、2024年5月10日に気象庁から「夏から秋にかけてラニーニャ現象が発生する可能性が次第に高まる見込み」という発表がありました。今年の夏も厳しい暑さが予想されています。
参考:日本気象協会 「2023年 お天気トレンド大賞」を発表 気象予報士118名が選んだ第1位は「記録的猛暑」
暑い夏に注意が必要な「熱中症」
熱中症は、環境要因や身体要因などで引き起こされる症状です。特に夏に発症する方が多く、夏の暑さや湿度に加えて、炎天下での運動といったさまざまな要因が重なると発症します。
熱中症とは?
熱中症は、環境要因と身体要因で引き起こされる症状であり、具体的には以下の症状を引き起こします。
熱中症の症状(軽度) |
めまい、たちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉のこむら返り |
熱中症の症状(重度) |
頭痛、嘔吐、倦怠感、判断力低下、集中力低下、虚脱感 |
熱中症の症状(軽度)が出た場合、風通しの良い日陰に避難する、水分や塩分を補給するといった応急処置が必要です。熱中症の症状が進行すると頭痛や嘔吐のような症状(重度)に悪化する恐れがあります。
熱中症が疑われる方が自力で水分補給できない場合は、すぐに救急車(119)を呼びましょう。
熱中症になる原因
熱中症になる原因は3つあり、環境・からだ・行動の3つに分けられます。具体的には以下のとおりです。
環境 |
気温が高い、湿度が高い、風が強い、日差しが強い、閉め切った屋内、エアコンのない部屋、急に暑くなった、熱波の襲来 |
からだ |
高齢者や乳幼児、肥満、糖尿病や精神疾患といった持病、低栄養状態、下痢やインフルエンザでの脱水状態、二日酔いや寝不足といった体調不良 |
行動 |
激しい筋肉運動や慣れない運動、長時間の屋内作業、水分補給できない状況 |
健康な身体であれば、体温が上昇しても発汗・皮膚温度の上昇などで体温の調整が可能です。しかし、脱水症状になっていると汗が出なくなり、皮膚から体温が逃げなくなるため、熱中症になる確率が高まります。
その他にも、さまざまな要因が重なることで熱中症を引き起こす恐れがあるため、熱中症の予防・対策は重要です。
毎年多くの人が熱中症に
総務省消防庁が公表した資料「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、2023年5月から9月の期間中、熱中症で救急搬送された人数の累計は91,467人でした。
この人数は平成20年度に調査を開始して以来2番目に多い数値であり、2022年の同期間中に救急搬送された71,029人を20,438人上回る数値です。
熱中症により救急搬送された年齢区分は高齢者(満65歳以上)が最も多いと記載されており、資料を見ると毎年多くの方が熱中症で救急搬送されていることがわかります。
参考:令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況(2023年10月27日)|総務省
熱中症を防ぐために必要な対策とは
熱中症を防ぐためには、暑さを避けることが基本となります。具体的には、以下のような対策が効果的です。
・扇風機やエアコンで温度をこまめに調節
・遮光カーテン、すだれ、打ち水を利用
・外出時には日傘や帽子を着用
・天気のよい日は日陰の利用、こまめな休憩
・吸湿性・速乾性のある通気性のよい衣類を着用
・保冷剤、氷、冷たいタオルなどで、からだを冷やす
さらに、こまめな水分補給を心がけると、熱中症予防が可能です。屋内や屋外を問わず、のどが渇いていなくても適宜、水分・塩分を補給しましょう。
熱中症対策にスマホを活用!その方法を紹介
熱中症の予防には、扇風機やエアコンを活用しながら少しずつ夏の暑さに慣れていくことが大切です。そして、スマホによってさまざまな情報を得ることも重要な対策となっています。
熱中症対策にスマホを活用する方法について、詳しくみていきましょう。
LINEに届く熱中症警戒アラート
環境省では、2020年7月31日にLINE公式アカウントを開設して以来、熱中症予防対策の情報提供を発信しています。
環境省が公開した記事「「熱中症特別警戒アラート」等の運用を開始します」(2024年4月16日)によると、2024年4月24日、熱中症特別警戒アラートの運用が開始されました。
加えて、昨今の気候変動や熱中症による救急搬送人数が増加の一途をたどっていることを受け、開始した情報提供が「熱中症特別警戒アラート」です。
参考:「熱中症特別警戒アラート」等の運用を開始します(2024年4月16日)|環境省
これらの情報を得るためには、環境省公式アカウントをLINEの友だちに追加する必要があります。
環境省公式アカウント情報はこちらです。
アカウント名:環境省
LINE ID:kankyo_jpn
環境省公式アカウントを友だちに追加する手順は、以下のとおりです。
<専用のリンクから友だちに追加する方法>
以下が、環境省を友だち追加するためのリンクです。
※スマホ以外で訪問した場合、スマホで読み込むためのQRコードが表示されます。
<アカウント名検索から友だちに追加する方法>
1.LINEアプリを起動
2.ホームタブ、もしくはトークタブ上部に表示されている検索窓をタップ
3.「環境省」と入力し、公式アカウントタブをタップ
4.環境省公式アカウントが表示されたら追加をタップ
<LINEID検索から友だちに追加する方法>
1.LINEアプリを起動
2.友達追加画面を開き、検索を選択
3.文字入力画面にて「@kankyo_jpn」を入力し、検索
4.環境省公式アカウントが表示されたら追加をタップ
なお、熱中症警戒・熱中症特別警戒アラートを受信するには、都道府県の設定が必要です。都道府県の設定方法はこちらのページをご覧ください。
Yahoo! 防災速報
Yahoo! 防災速報アプリは、地震や津波をはじめとしたさまざまな防災情報を提供するアプリです。このアプリが提供する防災情報は以下の通りです。
- 地震情報
- 津波予報
- 河川洪水
- 火山情報
- 国民保護情報(Jアラート)
- 自治体からの緊急情報
- 防犯情報
- 大雨危険度
- 避難情報
- 土砂災害
- 熱中症情報
- 気象警報
- 豪雨予報
Yahoo! 防災速報アプリで受信できる熱中症情報は、環境省のWBGT指標(暑さ指数)にアメリカ基準のExtremeレベルを加えた熱中症指標に基づいています。
設定した地点の予測値が設定値を超えた場合に危険度が通知され、危険度のレベルは以下の通りです。
レベル |
注意事項 |
極めて危険 |
外出は控えて運動は中止を。 外出は極力控え、室内では冷房を使用。 運動は中止し、涼しい場所で十分な水分・塩分補給を。 |
危険 |
屋外での活動はなるべく控えて。 外出はなるべく控え、涼しい室内で過ごす。 運動はできるだけ中止し、こまめな水分・塩分補給を。 |
厳重警戒 |
外出は炎天下を避けて。 外出は炎天下を避けて、室内では冷房を適切に使用。 激しい運動は控え、適宜水分・塩分を補給する。 |
警戒 |
十分な水分・塩分補給と休息を。 運動や激しい作業の際は定期的に十分な休息を。 水分・塩分補給を意識し、激しい運動は30分を目安に休憩。 |
また、熱中症警戒アラートは、熱中症の危険性が極めて高いと予測される日の前日17時、もしくは当日の7時に通知されます。通知には、熱中症予防の行動に関する情報も含まれるため、通知が届いた際は、よりいっそう熱中症を警戒しましょう。
Yahoo!防災速報のダウンロードはこちら(iOS、Android)
各種天気予報アプリ
「tenki.jp」や「熱中症アラート」のような各種天気予報アプリも熱中症の予防に効果的です。
tenki.jp
tenki.jpは、日本気象協会公式天気予報専門アプリです。毎日の天気予報はもちろん、熱中症や花粉など季節に合わせた情報を期間限定で配信しています。
また、気象予報士が大雨や台風といった災害の防災情報を解説しているうえ、住んでいる地域を登録することで居住地に合わせたさまざまな情報を受信可能です。
tenki.jpのダウンロードはこちら
App Store(iOS)
Google Play(Android)
熱中症警戒アプリ
熱中症警戒アプリにはさまざまな種類がありますが、今回は「熱中症警戒計」アプリを紹介します(iOSのみ利用可能)。
「熱中症警戒計」は、気象庁の観測データをもとに暑さ指数(WBGT)を算出し、熱中症危険度を5段階で表示するアプリです。10分ごとにデータが更新されるため、最新の情報をもとに熱中症対策(避けるべき行動、適切な水分補給)ができます。例えば、厳重警戒の場合、以下の熱中症対策が表示されます。
「熱中症の危険が高いので、激しい運動や持久走などは避けて、積極的に休息をとり水分補給を行いましょう。」
引用:熱中症警戒計(実際のアプリ画面より)
同時に5つの市町村や現在地を登録できるため、家族と離れて暮らしている方にもおすすめのアプリです。現在地と家族の暮らす市町村を登録しておき、連絡を取り合って熱中症を予防しましょう。
熱中症警戒計のダウンロードはこちら ※iOSのみ
App Store(iOS)
もしかして熱中症?不安を感じたら
ぐったりしていて呼びかけをしても反応が鈍い、自分で水を飲めないなど熱中症が疑われる症状が見られる場合、以下の対策をとりましょう。対策のほか、緊急時に活用できるアプリも紹介します。
熱中症の症状ととるべき対策
熱中症の症状ととるべき対策を、以下の表にまとめました。
重症度 |
症状 |
対処 |
医療機関の必要性 |
軽度 |
めまい、たちくらみ、こむら返り、手足のしびれ |
涼しい場所へ移動、安静にする、水分と塩分を補給 |
症状が改善すれば必要なし |
中度 |
頭痛、吐き気、嘔吐、身体がだるい、集中力や判断力の低下 |
涼しい場所へ移動、安静にする、衣服をゆるめて身体を冷やす、十分な水分と塩分を補給 |
水分補給ができない、症状の改善が見られない場合、診察が必要 |
重度 |
意識障害、けいれん、運動障害、身体が熱い |
涼しい場所へ移動、安静にする、衣服をゆるめて保冷材などで冷やす |
すぐに救急車を要請する |
救急車を呼ぶべきか迷ったときに「Q助」
「Q助」は、全国版救急受診アプリの愛称です。このアプリは、体調が悪い方の緊急度判定支援や利用可能な医療機関、受診手段の情報提供を目的として作られました。
アプリを開き、体調が悪い方の症状を画面上で選択していくと、救急度に応じた取るべき対応を教えてくれます。
具体的に、表示される文章は以下の通りです。
・今すぐ救急車を呼びましょう
・できるだけ早めに医療機関を受診しましょう
・緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう
・引き続き、注意して様子をみてください
上記文章が表示されたあと、医療機関の検索や受診手段の検索ができます。
このアプリで使われているプロトコルは緊急度判定プロトコルver.2(家庭自己判断)で、家庭向けに作成されたアプリです。医療機関・受診手段の検索は、厚生労働省「医療情報ネット」、一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「全国タクシーガイド」にリンクしています。そのため、緊急度の判定から医療機関への移動・受診がスムーズに可能な点が、このアプリの優れているところです。
Q助のダウンロードはこちら
App Store(iOS)
Google Play(Android)
スマホを活用して熱中症を予防しよう
熱中症が疑われる時は、水分や塩分の補給・安静にするといった対策をとり、重症化しないようにしましょう。呼びかけても反応が鈍い、自分で水を飲めないなど救急車を呼ぶべきか迷った時は、スマホアプリのQ助を活用すれば救急車を呼ぶべきか否かがわかります。その他にも、環境省公式のLINEアカウントや、Yahoo! 防災アプリから熱中症対策の情報を受信する方法も効果的です。
熱中症による救急搬送人数は年々増加傾向にあり、特に高齢者は屋内でも熱中症になるリスクがあります。もしスマホを持っていないのであれば、熱中症対策としてスマホを所持することもおすすめです。本記事で紹介した各種アプリを活用することで熱中症による救急搬送リスクを下げることが可能なため、積極的にアプリを活用しましょう。
※本記事の情報は2024年7月4日時点のデータに基づくものです。