令和4年3月23日に消費者庁から公開された「子どもの不慮の事故の発生傾向」によれば、令和2年における0歳~14歳の子どもの死因として「不慮の事故」は0歳が第5位、1歳~4歳・10歳~14歳が第3位・5歳~9歳で第2位という結果でした。交通事故を含む不慮の事故による死者数は、平成22年からほぼ減少傾向にあるようです。
また、警察庁から令和4年9月16日に公開された「令和3年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」によると、児童虐待の通告人員は計108,059人、児童買春などの被害児童数は計1,504人、児童ポルノの被害児童数は計1,458人、SNSに起因する事件の被害児童数は計1,812人です。
こうした事件・事故から子どもを守るための手段として、GPS端末やGPS機能付き端末を所持させることが挙げられるでしょう。しかし、子どもに端末を持たせることに抵抗がある方も少なからずいます。
この記事では千葉県松戸市で開始された「GPS端末購入支援事業」を皮切りに、子どもにGPS端末を持たせるメリットや注意点、おすすめの端末やアプリを解説します。
参考:
子どもの不慮の事故の発生傾向 ~厚生労働省「人口動態調査」より~
令和3年における少年非行、児童虐待 及び子供の性被害の状況
千葉・松戸市で子どものためのGPS端末購入費を助成する事業がスタート
千葉県松戸市では、児童(小学生)の日常生活や登下校における安全確保と、保護者の不安軽減を目的として、「児童(小学生)の安全対策GPS端末購入支援事業」を開始しました。
事業の概要は、「条件を満たす対象者に10,000円を上限としたGPS端末購入時の初期費用助成」が実施されるというものです。
月額使用料や月額オプション費用、子ども用携帯電話やスマートフォン、スマートウォッチなどは助成対象外となりますが、「GPS機能を使って子どもの安全を確保したい」と考えている保護者にとっては非常に有用な事業でしょう。
この事業詳細については、松戸市の公式HPでご覧いただけます。
児童(小学生)の安全対策GPS端末購入支援事業
なお、松戸市の事業ではあくまでもGPS端末に対象が限定されており、スマートフォンなどGPS機能付き端末は対象外となっています。
ただ、松戸市以外にお住まいで子どもにGPS機器を持たせる場合、スマートフォンも選択肢のひとつに入ってくるでしょう。スマートフォンはメリット・デメリットともにありますが、適切に使用すれば子どもの安全を確保する上で効果的なツールとなります。スマホ活用の詳細については後述しますが、まずは子どもにGPS端末を持たせるメリットについて見ていきましょう。
子どもにGPS端末を持たせるメリット
子どもにGPS端末を持たせる最大のメリットは、保護者が子どもの位置情報を常に把握できる点です。登下校時はもちろん、子どもが遊びに出かけている時や、自宅で留守番をしている時など、子どもが危ない場所にいないかが分かります。迷子になっていないか、ちゃんと自宅にいるかが離れた場所からでも確認できるため、保護者にとっては非常に安心です。
「令和4年版警察白書」によれば、子どもが事件に巻き込まれる被害件数自体は平成24年から令和3年にかけて減少傾向にあるものの、「略取誘拐」に遭う件数は横ばいに近い状態が続いています。保護者の目が届かない場所・時間帯は最も注意すべきですが、対策が取りづらい環境でもあるため、防犯ブザーなどの防犯グッズもGPS端末と一緒に持たせると効果的でしょう。
参考:令和4年版警察白書
その他のメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
・学校への持ち込みが可能
・子ども用携帯よりも安価
GPS端末は、学校内への持ち込みが禁止されていません。文部科学省が定めるところによれば、小学校の場合「携帯電話の持ち込みは原則禁止」とされている一方で、GPS端末への制約は課されていないのです。もちろん、やむを得ない事情がある場合は携帯電話の持ち込みも許可されていますが、一時預かりなどの対象となる場合があるため、制約なしに持ち込めるという点ではGPS端末にメリットがあります。
また、子ども用携帯電話は「端末料金」と「位置情報検索サービス利用料金」の面で、GPS端末よりもコストがかかるという難点があります。大手携帯キャリア3社の子ども用携帯電話の一部について、初期費用と位置情報検索サービス利用料金を以下で見てみましょう。
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A社 |
B社 |
C社 |
端末料金 |
14,256円 |
15,840円 |
18,000円 |
位置情報検索サービス利用料金 |
月額220円 検索料5.5円/1回 |
月額330円 ※別途パケット通信料 |
無料 ※別途パケット通信料 |
子ども用携帯電話は通話やSMS機能なども付いているため、ある程度のコストが必要です。しかし、GPS機能のみの端末であれば、端末料金や位置情報検索サービス利用料金を抑えられます。
子どもに持たせておくGPS端末、おすすめは?
では、実際に子どもに持たせるとしたらGPS端末とGPS機能付き端末のどちらが良いのでしょうか。ここではそれぞれの特徴を解説します。
見守り専用のGPS端末
GPS端末には、位置・経路情報のみを保護者に通知する「単機能タイプ」と、子どもが操作することで保護者に通知が届く「一方向タイプ」、GPS端末と保護者の端末間でやり取りが可能な「双方向タイプ」の3種類が存在します。
「単機能タイプ」と「一方向タイプ」は授業中などに通知音が鳴ってしまう心配がなく、小型でバッテリーも長持ちする傾向にあるため使い勝手の良い端末です。
このような「見守り専用」のGPS端末には、ほとんどの場合以下の機能が付いています。端末によって機能や利用料金は異なるため、ご家庭の事情に合わせて選びましょう。
・子どもの現在地表示
・通知エリアの設定
・保護者のスマートフォンに複数のGPS端末を登録
・1台のGPS端末を複数人で見守り
・バッテリーの通知
・移動履歴の保存
スマートフォン
松戸市が開始した助成事業ではGPS端末のみが助成対象でしたが、他の自治体では同様の助成事業を実施しているわけではありません。そのため、松戸市以外にお住まいの方は、必ずしもGPS端末にこだわることはないでしょう。
文部科学省の定める「小学校における携帯電話の原則持ち込み禁止」についても、やむを得ない事情がある場合は持ち込んでも問題ないとしています。また、学校は持ち込みができるGPS端末を持たせ、休日など学校以外の場面ではスマートフォンを持たせるといった使い方も考えられます。
スマートフォンの場合、位置情報検索サービスを利用できるのはもちろん、通話やメール、アプリも利用できるため、より効果的な子どもの見守りが可能です。他にも、保護者の使用しているキャリアと同様の回線を契約することで家族割引が適用になったり、フィルタリング機能で子どもが安全に利用できたりと多くのメリットがあります。
スマートフォンのGPSで子どもを見守るおすすめアプリ
iPhoneに搭載されている「友達を探す」機能のように、iPhone・Androidの両端末には位置情報の検索・共有機能があります。しかし、子どもの見守りという観点では、機能面で不安と感じる方もいるでしょう。
ここでは、iPhoneとAndroidの両端末にインストール可能なGPSアプリのうち、子どもの見守りにおいて特におすすめできるアプリを3つ紹介します。
Life360
1つ目のおすすめアプリは、米国に拠点を置くLife360 Inc.が提供している位置情報アプリ「Life360」です。主たる機能としては以下の7点が挙げられます。
・招待制サークル
完全非公開の招待制サークルを作成できるため、家族のみでリアルタイムな位置情報を共有可能です。
・移動履歴の確認
家族が過去に移動した経路の履歴を確認できます。
・登録箇所における通知
小学校や塾など、あらかじめ登録しておいた場所へ出入りした際に家族全員が通知を受け取れます。
・エリア設定
よく行く場所や普段の遊び場などをカスタムゾーンとして設定可能です。
・ワンタップで経路案内
マップ上に表示される家族の写真をタップするだけで、家族のいる場所までの経路が表示されます。
・ヘルプアラート
家族に何かが起きた際には、位置情報を含むSOSが家族と緊急連絡先に送信されます。
・チャット機能
家族間で「帰宅した旨」を伝えるなどのチャットコミュニケーションも可能です。
多機能ながらも招待制という閉じられた枠内で利用できるため、安心感が強いアプリといえるでしょう。簡単なチャット機能が付いているのも便利です。
Find My Kids: チャイルドロケータ
2つ目のおすすめアプリは、子どもの見守り機能に特化した「Find My Kids:チャイルドロケータ」です。子どもの位置・経路情報の追跡機能や、訪れた場所についての通知機能など見守りアプリとして基本的な機能は付いており、以下4つの特徴があります。
・SOSシグナルの受信
何らかの事情で子どもが電話をかけられない場合に、位置情報を正確に取得した上で、自動的に子どもの周辺音について録音が開始され、SOSシグナルとして送信されます。
・周辺音の発信
マナーモード状態など、子どもが電話に出られない状況下にある場合、アプリを通じて子どもの周辺音を聞くことが可能です。(※Android端末でのみ利用可能)
・スクリーンタイムの確認
子どもがスマートフォンの機能をどれくらいの時間利用しているのか確認できます。(※Android端末でのみ利用可能)
・GPSスマートウォッチとの連携
GPSスマートウォッチと連携すれば、位置情報の取得、周辺音の発信、そして電話をかけることも可能です。スマートフォンよりも紛失しづらいため、低年齢の子どもに最適でしょう。
子どもの周辺音を聞けるという機能は、保護者にとって非常に安心できるポイントです。
ココダヨ
災害発生時の位置情報共有アプリとして、「ココダヨ」は非常に有効なアプリです。見守り機能やチャット機能も付いていますが、以下3点は特筆すべき機能といえます。
・即自動通知
震度5弱以上の地震が発生した際に、あらかじめ設定されたメンバーに対して瞬間的に通知が届きます。震源地に近い家族がいる場合は画面背景が赤くなり、該当する家族のアイコンが赤丸で囲まれる仕様です。
・安否確認
災害発生時に「無事です」「たすけてください」「今は報告しない」のポップアップが表示されるため、ワンタップで家族の安否を確認できます。
・避難所検索機能
現在地から近い避難所が最寄り順で表示されます。土地勘のない場所でも地図アプリと連携して経路が表示されるため安心です。
子どもが離れた位置にいる時に災害が発生した場合、電話やメール、コミュニケーションアプリは非常に混雑して使えない恐れがあるため、災害時に特化した位置情報共有アプリは心強い存在です。
子どもにスマホを持たせる際の注意点
子どもの見守りを目的としてスマートフォンを持たせても、保護者が意図していなかった用途に使用されたり、学校に持ち込めなかったりといった問題が発生する恐れがあります。この2点については特に注意しておきたいポイントのため、以下で詳しく見ていきましょう。
小学校の場合:持ち込みの可否が学校によって異なる
先述したように、文部科学省によって「小学校における携帯電話の持ち込みは原則として禁止」とされています。やむを得ない事情がある場合は条件付きで認められていますが、小学校によっては、その限りではない対応を実施しているでしょう。
文部科学省による令和元年8月1日時点の調査に基づくと、公立小学校において児童の携帯電話持ち込みを原則禁止としている割合は「95.9%」に及びますが、国立小学校では「72.2%」で、私立小学校では「75.0%」と若干の振り幅があります。また、「一定の理由・事情」か「機能を限定した機種」に限って「家庭からの申請により持ち込みを認めている」割合は、公立小学校で「69.5%」、国立小学校で「76.9%」、私立小学校で「77.7%」で、7割~8割の小学校では条件付きで携帯電話の持ち込みが許可されているようです。
都道府県教育委員会としては、小学校について「23.1%」の割合で原則持ち込み禁止、市町村教育員会としては「35.7%」の割合で原則禁止という方針が定められています。
結果を見ると、携帯電話の持ち込みを原則禁止としている小学校は多いものの、一定の条件を満たす場合に限り、持ち込み自体を禁止している小学校はそれほど多くありません。
スマートフォンを含む携帯電話の取り扱い方法について細かい点を見ていくと、小学校により定められているルールは全く異なるため、子どもが通う小学校のルールは確実に把握し、子どもにもルールの順守を徹底しましょう。
参考:文部科学省「学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議」審議のまとめ
スマホ使用のルールについて家族で決めておく
子どもにスマートフォンを持たせる際には、使用ルールを家族内で詳細に決めておくことが重要です。フィルタリング機能を使って有害なサイトから子どもを守ることはできても、コミュニケーションツールやSNSの利用、有害性の低いWebサイトや動画の閲覧などに制限をつけないと、子どもがスマホ依存症になる恐れがあるためです。対策として、1日にスマートフォンを利用できる時間を定めた上で、「スクリーンタイム機能」などを利用して利用時間を守っているかを随時確認できるようにしましょう。
また、不適切なスマートフォンの利用に伴う学力・視力の低下や同級生とのコミュニケーションにおける問題なども考えられるため、「ルールの設定と順守されているかの確認」に加えて、「スマートフォンを利用している上で困ったことはないか」を確認することも重要です。
子ども用のスマホは「使わなくなったスマホ」を使うと便利!
子ども用携帯を持たせる際は、家庭内の事情に合わせて適切な端末を選ぶことが重要です。もしスマートフォンを持たせたい場合には、新品の高価な端末を大手キャリアで回線契約とともに購入する選択肢もありますが、使わなくなったスマホの活用も有効です。
使わなくなったけれど子どもの見守り用としては十分機能するレベルのスマートフォンが手元にある場合は、格安SIMと組み合わせてお得に再利用するのがおすすめです。再利用すれば初期費用が不要となり、月々の利用料金も安価なため家計にかかる負担が減ります。その上、スマートフォンとしての機能はそのまま使えるため、キッズケータイやGPS端末よりも便利です。
現在は使っていないスマートフォンを子ども用に再利用する場合は、こちらの記事も参考にしてください。
まとめ
昔から、親の目が届かない場所で子どもが事故や事件に巻き込まれてしまうケースはありますが、今やGPS端末やスマートフォンなどのデバイスを使って、子どもの安全を守れる時代です。アプリなども駆使しつつ上手に活用できれば、子どもを危険から未然に守れるため、家庭の経済事情や学校のルールなども加味した上で適切な端末を選びましょう。
安全を守るためにスマートフォンを子どもに持たせるのであれば、保護者が利用しなくなったスマートフォンを再利用するのがおすすめです。端末代がかからず、さまざまな設定に関してもこれまで使い慣れている保護者が行えるため、より安心できるでしょう。